個人事業主のアメリカ向け越境EC 手順と成功への道筋

個人でアメリカへ商品を輸出してECを始めたい!と思っているけれど、いったい何から手をつければ良いか分からない、まず何をしなければいいか分からない。
本記事ではそういった疑問にお答えします。
私たちは、現在約7年間にわたり、お客様がアメリカで商品を販売するにあたり必要な、貿易、物流、ECをサポートして参りました。お客様の成功事例、失敗事例、日々の運用での経験を交え解説します。
記事のテーマ
本記事では、アメリカで商品選定、流通経路、物流、貿易に関して何を注意し、何を決めていかなければならないかを解説します。記事を読んでいただければ、アメリカでのビジネススタートがより一歩近づくのではないかと思います!
目次
販売商品の選定
価格設定
販売(流通)経路
コストを抑えた物流の構築方法
輸入者
アメリカ会社設立
輸出規制の確認
関税の確認
まとめ
1.越境ECとは
1-1.越境ECの定義
「越境EC」とは、国境を越えて行われるE-commerceのことを指します。具体的には、海外に住む消費者が他国のECサイトで商品やサービスを購入する形態です。たとえば、日本の消費者がアメリカのECサイトで商品を注文したり、逆に日本の企業が海外の消費者に向けて商品を販売することが該当します。
1-2.個人で越境ECを始める場合の注意点
個人で越境ECを始める際には、限られた労力で準備を行う必要があります。
ただ、労力が限られているからと言って、プロセスを省略すると、プロジェクトが失敗に終わってしまったり、修正に大きなコストを要したりする場合があります。
ここでは、個人で越境ECを行うためのお勧めの方法をご紹介します。
1つ目は、商品数を限定する事です。まずは少ない商品から始め、軌道に乗ってから商品数を増やす方が、効率的に行えます。
2つ目は、外部の力を活用する事です。
外部の会社を活用し、オンラインサイトのメンテナンス、物流作業の自動化、マーケティング活動外注する事は、自分の業務量を減らすだけでなく、その国の運用に沿ったノウハウを買う事にもなります。
2.アメリカ市場の特性と顧客ニーズ
2-1:米国市場の規模
アメリカ市場の規模はどれほどでしょうか。
以下が主要項目の規模にです。GDPは日本の6倍、人口は日本の3倍の規模があります。
2-2:アメリカの消費文化と購買習慣
アメリカは大量消費文化の中心地として知られており、新しい製品やサービスに対する強い需要が見られます。企業は絶え間ない革新や新製品の投入を行い、消費者もこれに対して敏感です。特にテクノロジーやファッションの分野では、最新のトレンドに対する関心が高く、頻繁に商品を買い替える傾向があります。
また、E-commerceにおいては返品が多いことが特徴です。返品が理由を問わず無料で可能なお店も多く、サイズや色違い等候補となる商品をまとめて購入し、後で返品するなどは広く行われており、返品の増える原因となっています。
近年ではエクスペリエンス消費やサステナブル消費、健康志向といった新しい消費習慣が広がっています。多様で個性的な消費者が多いアメリカ市場では、これらの特徴を理解し、それに合わせた商品展開やマーケティングが重要です。
3: 個人事業主が越境ECを始める方法
3-1:商品選定
まずは商品を選定する必要があります。
個人で越境ECを行う場合は、特にユニークで他の販売者が提供していない商品を選ぶ事が重要です。
そのためには、自分の業務、趣味など詳しい分野で選定する事が望ましいと思われます。
また、商品によっては規制があったり、日本の仕様ではそのまま販売できないものもあるので注意が必要です。
以下参考まで越境ECで購入したい商品のアンケート結果です。
コロナ後、越境 EC で購入したい日本の商品(複数回答)
令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書より引用
米国における商材別 EC 市場規模(2021 年)
令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書より引用
3-2: 法律や規制の把握と対応
各商品ごと、輸出規制がある場合があり、アメリカに入国できない商品、入国前に手続きが必要な商品があります。規制があるのに出荷してしまうと、返送しなければならなかったり、廃棄される可能性があります。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
アメリカへの輸出規制 FDA・食品・衣料品・子供向商品・自動車部品など
3-3: 関税の確認
輸出する商品のCIF価格(輸出金額) x 関税率で計算します。ただし、輸出金額によって免税になったり、品目や生産国によって関税が異なります。CIF価格とは何か、関税率はどのように調べればいいのかは以下の記事をご覧ください。
3-4:プラットフォームの選定と活用
越境ECでの販売方法としては主に以下の2つの方法があります。
1)自社ECサイトで販売
2)アメリカのECモールに出店
1)「自社ECサイトで販売」は、アメリカで良く使用されているShopify、Woocommerce、Magento などを利用されることをお勧めします。
日本独自のプラットフォームは、アメリカ独自の決済方法、売上税、郵便番号などに対応していない場合もあるので注意が必要です。
2)「アメリカのECモールに出店」は、AmazonUSA、eBay、EtsyなどのECモールに出店する方法です。手数料がかかりますが、集客が1)よりも容易です。
アメリカのECモールランキングは以下のブログからご覧ください。
アメリカ越境EC市場で知っておくべき参入戦略と成功要因
4:物流
4-1 在庫の持ち方
日本の倉庫から発送とアメリカ国内倉庫から発送のパターンがあります。
1)日本の倉庫から発送
日本で在庫、日本で梱包し、国際宅配便などでアメリカの個人宅など最終目的地まで輸送します。手軽ですが、オーダー毎に輸送するので輸送費が高くなります。
2)アメリカの倉庫から発送
日本又は生産地からアメリカまである程度まとめて輸送し、アメリカの倉庫で保管。オーダーが入り次第アメリカ倉庫から個人宅など最終目的地まで輸送します。
アメリカの倉庫まで海上輸送を活用できるので、越境ECより輸送コストは抑える事ができ、さらにアメリカから発送するのでお客様への配送日数を抑える事ができます。
下記の記事も参考になります。
海外販売の輸送コストを半額、輸送日数を9割削減する方法(米国)
アメリカ国内倉庫の問い合わせはこちら。アメリカへの輸出、国内宅配輸送も手配。
4-2 輸出
4-3 アメリカ現地の物流
5 マーケティングプラットフォームの選定と活用
5-1: 効果的な集客手法とは
5-2: SNSを活用したプロモーション
5-3: 顧客対応とリピーター獲得
2.価格設定
1) アメリカの物価
アメリカの物価は商品によって異なりますが、日本の約2~3倍という場合が多くなっています。輸送費や関税などで日本で販売するよりもコストがかかりますが、販売価格も高く設定できるというのがアメリカで販売するメリットです。
以下の記事も参考にして下さい。
2)他日系企業の価格設定
アマゾンなどで類似商品を検索し、価格を調査することができます。Google Shopping を利用すれば、各種ECサイトの価格を調べられるので便利です。
また、ユニクロ、MUJI、アシックス、資生堂、ソニー、アイリスオーヤマなどアメリカでも多数販売している会社の日本とアメリカの価格差を参考にする事も重要です。
3.販売(流通)経路
どの販売(流通)経路で販売するか事前に決めて置く必要があります。
以下、代表的な流通経路です。
1)Amazon, eBay, Etsy, Wayfair他マーケットプレイスでの販売
アメリカには各種マーケットプレイスがあり、競争が激しいですが、多数の訪問者を獲得できるチャンスがあります。
詳しくはこちらから
Wayfair(ウェイフェア)とは何か?アメリカの家具専門サイトでニトリの2倍の売上
「SHEIN」(シーイン)とは何か?アメリカのZ世代に大人気のECファッションリテーラー
米国中古品サイト7選 Poshmark The Real Real MERCARIまで
Etsy(エッツィー)とは何か。アメリカで人気のハンドメイド商品を販売するEC
2)自社ECサイトでの販売
Shopify, Word press, Magento, WIXなど、日本でもよく使われているECサイトプラットフォームは、アメリカでも広く使われています。
通貨、輸送方法、売上税、決済手段等、アメリカの商習慣、法令に沿って作成する必要がありますが、上記プラットフォームであれば、それが簡単に作成する事ができます。
ECサイト作成のご相談はこちらから
3)米国小売店での販売
アメリカのデパート、量販店などで販売する方法。
主には以下の方法があります。
展示会に出店し、各バイヤーとコネクションを作る。
オンラインでのバイヤーとのマッチングサイトに登録する。
HPのベンダー用の問い合わせ窓口に問い合わせする。
コンサルタント、商社に依頼する。
4)自社小売店での販売
お店を借りて、自社で販売する方法。
複数年契約、敷金、改装費用、行政の許可取得など投資は必要ですが、知名度の拡大、消費者からの信頼を得るには最も確実な方法です。
インターネットに貸店舗の情報が掲載されているので、それでおおよその相場を知ることができます。
4.コストを抑えた物流の構築方法
越境ECタイプとアメリカ国内倉庫タイプがあります。以下各タイプをご紹介します。
1)日本の倉庫から発送
日本で在庫、日本で梱包し、国際宅配便などでアメリカの個人宅など最終目的地まで輸送します。手軽ですが、オーダー毎に輸送するので輸送費が高くなります。
2)アメリカの倉庫から発送
日本又は生産地からアメリカまである程度まとめて輸送し、アメリカの倉庫で保管。オーダーが入り次第アメリカ倉庫から個人宅など最終目的地まで輸送します。
アメリカの倉庫まで海上輸送を活用できるので、越境ECより輸送コストは抑える事ができ、さらにアメリカから発送するのでお客様への配送日数を抑える事ができます。
下記の記事も参考になります。
海外販売の輸送コストを半額、輸送日数を9割削減する方法(米国)
アメリカ国内倉庫の問い合わせはこちら。アメリカへの輸出、国内宅配輸送も手配。
5.輸入者の決定
貿易にはアメリカでの輸入者を取り決める必要があります。
以下候補をご紹介します。
1)米国代理店
アメリカの代理店や商社が輸入者となり、アメリカで販売する方法。
日本側の販売者からすると、アメリカで販売する手間がなくなり比較的手軽に
開始できます。ただ、販売が見込める商品でないと取り扱ってもらえなかったり、
口銭(手数料)をある程度支払う必要があります。
なお、アマゾンなどEC業者は基本的に輸入者にはならない事が多いため、誰か輸入者を立てる必要があります。
2)自社でアメリカ法人を設立し自社を輸入者とする。
自社の責任で輸入、販売する方法。
代理店に任せるよりも自社で販売(流通)経路を構築することができ、場合により代理店よりもより積極的に販売活動ができます。
アメリカでの会社設立は容易に且つ安価に(約$500から)できるため、この方法を選ぶケースも多数あります。会社設立についてはこの記事が参考になります。
アメリカで会社設立、起業の手順/費用。$558(デラウェア州)で設立可能。
3)非居住者在庫
日本法人としてアメリカに輸入する方法。
なお、輸入通関時にアメリカ居住の代理人を立てる必要があります。
ただし、アメリカ法人がない場合は、アメリカにおいて商業(営業)活動を行う事はできません。商業(営業)活動を行う場合にはアメリカ法人を設立し、法人税を納税する必要があります。
4)販売先(個人)
越境ECで販売する場合には、販売先(個人)が輸入者となる方法。越境ECではこの方法。
6.アメリカ会社設立の方法
アメリカで会社を設立するのは簡単です。手続きは、日本にいながらネットを通じて約$600、最短5日で会社を設立できます。現地社員を雇用したり、駐在員を置く必要もありません。最低資本金額も多くの州ではありません。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
【誰でも簡単】米国で会社設立。$558(デラウェア州)、最短5日で設立可能。
7.輸出規制の確認
各商品ごと、輸出規制がある場合があり、アメリカに入国できない商品、入国前に手続きが必要な商品があります。規制があるのに出荷してしまうと、返送しなければならなかったり、廃棄される可能性があります。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
アメリカへの輸出規制 FDA・食品・衣料品・子供向商品・自動車部品など
8.関税の確認
輸出する商品のFOB価格(輸出金額) x 関税率で計算します。ただし、輸出金額によって免税になったり、品目や生産国によって関税が異なります。FOB価格とは何か、関税率はどのように調べればいいのかは以下の記事をご覧ください。
9.まとめ
以上、アメリカでEC起業する前にチェックすべき8つの事をまとめました。
基本データ、商品選定、価格設定、販売経路、物流、輸入者、輸出規制の確認、関税の確認とどれも大事な点ばかりです。よく調べずに、とりあえずで進めてしまうと、思わぬコストが掛かったり、アメリカに商品を輸入できない事もあります。従い、よく調べてから取り組まれる事が重要です。
また、アメリカでのEC事業立ち上げにはこちらの記事も参考になります。
なお、当社トレードポータルでは、アメリカ向け越境ECに必要な、物流、EC立上げ、現地法人設立のサポートをしております。
保管1ケースから、初期費用なし、従量課金で始められるので、リスクを抑えたアメリカ事業展開が可能です。
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